ビットコインと貨幣の機能

そもそも貨幣とはなんぞや
貨幣の機能
今後、ビットコインが貨幣として使用されるのか、金のような資産として扱われるのか、と問われると、金よりも可動性の優れた金に似た資産として扱われるようになるのではないかというのが僕の意見です。とはいえ、貨幣としても機能しますし、ビットコインを理解するにはその貨幣とは何ぞやということの理解が不可欠です。
貨幣の機能としては以下の3つが挙げられます。
- 交換手段
- 価値貯蔵手段
- 価値尺度
順番に見ていきましょう。
交換手段とは、直接交換の欠点を克服するための機能です。直接交換は一番シンプルな価値の交換手段です。リンゴ5つと魚1匹の交換というような原始的な交換手段です。でも、りんごと家の交換は難しいです。家がリンゴ何個分に相当するかもわからないし、そもそも大量のリンゴと引き換えに家を交換したい家主はいませんし、いたとしても大量のリンゴを用意している間にリンゴが腐ってしまいます。でも、間に貨幣を交換手段として使うことによってこの不都合を回避することができます。リンゴをたくさん売って稼いだら、まとまったお金で家主が満足する金額を渡して家を買えばよいからです。
次に価値貯蔵手段について考えてみましょう。仮にリンゴのような生鮮食品を貨幣として選んだらどうなるでしょうか。腐ってなくなって価値は0になってしまいます。つまり、時を超えて価値保全することができないのです。ですから価値を保全するには物理的な劣化のないものでなければなりません。それに加えて、毎年の供給量が少ないものでなければなりません。なぜなら、貨幣の総量に対して毎年の新規供給量の多いものを選ぶとその貨幣の価値が希釈化するからです。供給量の多いものをイージーマネー、供給量の少ないものをハードマネーといいます。
最後に価値尺度について。特定の交換手段が社会に普及すると、全ての商品の価格が交換手段を単位として表示され、同じ価値尺度で表示できるようになります。すると、複雑な経済計算ができるようになり、分業が高度化し、資本蓄積が進み、市場が成長します。資本蓄積の結果、例えば素手で魚を取っていた漁師に船を建造する余裕が生まれ、より効率的に漁業ができるようになり生産性が向上します。
ビットコインはハードマネー
貨幣が価値貯蔵手段を長期に保持するためには、ハードマネーであることが求められます。ハードマネーとはストック(総量)をフロー(新規供給量)で割るストック・フロー比率が高いもの(つまり新規供給量の割合が総量に対して少ないもの)、イージーマネーとはストック・フロー比率が低いもの(つまり新規供給割合が総量に対して多いもの)です。例えば総量100に対して、新規供給量が1の金と総量100に対して、新規供給量が7のドルなら後者のほうが、ストック・フロー比率が高くイージーマネーです。
貨幣の歴史を振り返ると、今まで使われてきた貨幣として貝殻、ビーズ、石貨、塩、牛、銀、金、金で裏付けられた兌換紙幣、法定通貨などがありますが、貨幣として使われる財の供給量が増加すると財は貨幣としての機能を失い、よりストック・フロー比率の高い財に貨幣の座を奪われています。
ビットコインは2025年時点で金を上回るストック・フロー比率の貨幣です。つまり、金よりもハードマネーなのです。2140年にビットコインの新規供給が完全に停止すると、ストック・フロー比率は無限大、究極のハードマネーになります。
総供給量は2100万枚、増やせない供給
ビットコインは総供給量があらかじめ2100万枚と決められていて、毎年の新規発行量も毎年低減していきます。ビットコインは人類史上最も供給が厳しく制限された財といってもいいと思います。
これまでの歴史を振り返ると他の財を貨幣とした場合、貨幣の需要が増えると貨幣を増産することができるために、長期的な価値貯蔵手段としては限界がありました。例えば、ドルの供給量を増やすことによりインフレになり、ドルの実質購買力が低下しドルの資産価値が減少し多くのアメリカ人が苦しんでいます。
でも、ビットコインの場合、どれだけ需要が増えても供給が増えることはありません。増える需要と増やせない供給が均衡するには、ビットコインの価格が上昇するしかありません。
ビットコイン価格が上昇し続ける理由
なぜ、ビットコイン価格が上昇し続けるのか、一言で言えば供給拡大により減価しないことが保証されているからです。政府、団体、個人がどれだけ働きかけても供給を拡大することはできません。ドルや円は政府がその気になればいくらでも刷ることができて、結果としてインフレを招き個人の資産が減少します。しかし、政府の管理下にないビットコインにはその心配がありません。個人的には最強の価値保存手段と思います。